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大創出版100円の本

 父は、ダイソーに行くのが好きだった。いろいろなものを100円で買って、楽しんでいた。庭のネコ除け(ネコ型の黒い顔に、ビー玉の目がついたもの)など、よく考えられた商品だと思った。配線カバー、靴に貼る蛍光シール、あれば便利と思えるようなものが100円だと、つい手が伸びてしまうようだった。
 ダイソーが本を作っていたことは知っていたが、その中に「文字練習帳」があるのを知ったのは、数年前、父について行ったときのことだ。「えんぴつで書く奥の細道」というのを買ってみた。大学時代、1年間かけて、とても個性的な女の先生から受けた講義を思い出し、なつかしくなったからだ。なつかしいと言っても、心をかすめたくらいの気持ちだったのだが、そのほんのちょとの動機でも、100円なら買い物かごに入れる。そして、そんな深い動機でもなかったから、父の買ったものと一緒に、父の本棚に置かれっぱなしになっていた。
 1週間前、父の本棚に、私が買いものかごに入れた「えんぴつで書く奥の細道」が、白いまま残っているのを見つけた。父は、もう書くこともないので、自分で持ち帰り、練習を始めた。
 書体は、他の数人の先生の練習帳もやっているので、正直、あまり好きではなかった。でも、それはそれで練習になる。現代語訳も解説もついて、分かりやすい内容になっている。もちろん、掲載されている段は、ぜひ知っておきたい有名なところばかりが厳選されている。なぞり書きしながら、ゆっくり味わう奥の細道は、いろいろな思い出とまじりあって、楽しかった。
 1円古書、100円本。値段を言えば、作り手としては残念な思いもあるだろうが、流通させるというのは、値段が付くということ。まさに、勢いのあるニトリの宣伝文句ではないが「お値段以上」の内容でなければ、流通できないということだろう。
 希窓社『魔法のないファンタジー』が1円古書として出ている。複雑。読む人が読めば、1600円以上の価値はあると思う。
 本は、読む人が、いかに受け止め、活用するかで、その価値も変わってくる。1冊の本が、その値段の何百倍、何千倍の価値を持つこともある。本は、そういう出会いを求めている、と思う。もちろん、大創出版の100円本たちも。
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Author:マド
希窓社 代表
希窓社の本

庄野薫

お金をかけずに子どもを勉強させる法

進学校での勉強法‐落ちこぼれる前に読む本‐

藤野光樹詩集
魔法のないファンタジー
6月1日発売。
A5判、104ページ、

(希窓社第1冊目『サイカイ武田泰淳ー作品論と資料で読む』
 好評発売中)

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