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若い医師が酷使されすり減らされる「専門病院」の制度

 私の住む地域のS病院は(といっても、どの地域でも同じかもしれないが)、長期入院ができない。重症患者を受け入れ、治療が済んだら、他の病院に転院しなければならない。治療というのは、大きな、難しい手術などのことで、それが終わったら、他の一般病院でも診ることができるというので、転院させられる。
 だから、S病院の医者は、時には、命がけ(これは患者の方なのだが)の手術の責任を負う。若く優秀な医師は、全能力を使ってその手術を成功させる。成功したとしても、そ。の医師は、患者の回復を見ることもなく、次の難しい、命がけの手術を行わなければならない。
 なんと残酷なシステムであることか。医者であっても人間なのだ。自分の医療が、患者に微笑みをもたらす、その瞬間がやりがいというものではないか。それを、次から次へと、他の医者ができない難しい手術をさせ続ける。善良であればあるほど、純粋であればあるほど、気を抜けない、手を抜けない。若い優秀な医者は、すり減っていくだろう。
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 こんなことを思ったのは、実は、私の父を看取ったときの経験からである。父は、亡くなるまでに4人の医師の世話になった。亡くなったのだから、かなり色々な思いはある。ただ一つ、残念なのは、せっかくS病院で、難しい手術を受け、成功したというのに、1週間で転院させられ、それから20日の命だったということだ。結局、手術だけではなく、その後の管理というものも命を左右するのだ。それは、医者の処方だけではなく、看護婦の質、さらに、医療体制(説明や心理的ケア)など総合的なものがよくなければ、瞬間の「手術の成功」は、一定の時間後には「失敗」と同じ結果になる。それは、あとで気づかされたことなのだが。
 そして、充血した目で説明をし、案じてくれた若い医師のことを思い出した。彼は、毎日毎日、同じような経験を繰り返しているのだろう。患者の回復という喜びの瞬間も見ないままに・・・。
 このS病院で、別の医者が逮捕された。容疑は麻薬を輸入したというものだった。その医者のことも、ふと頭をよぎった。彼も、すり減らされていたのではなかろうか。

 私は、医者がどんな気持ちで患者に接しているのか知りたいと思った。そうでなければ、今回のことを自分自身の中で納得することができないと思ったからだ。
 それで、題名から「医師が患者になるとき」を読むことにした。てっきり、病気になった医者の体験記のようなものかと思ったら、アメリカの医者たちの、精神疾患に関する研究書だった。
 この本を読んでいたら、医者たちを見る私の目は、ずいぶん変わっていたと思う。そして、私のあの「時」、「時」の選択も違ったような気がする。父には遅かったけれど、今後の医者や病院の選択や医者、医療についての考え方に大きな示唆を与えられたように思う。


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