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2015年11月23日―読まれていない戦争・戦後文学

 作家の辺見庸さんが先日の新聞(11月20日付)で、「再びファシズムに振れる恐れ」という記事で、現在の社会状況を批判していた。 
 その根底に、戦争の責任や事実がきちんと世論として存在していないことを指摘している。
 一方で、政治は、従軍慰安婦の問題や、戦争犯罪の話が出るたびに、不当な非難という立場を取っている。南京虐殺はでっち上げだとか、証拠がない。従軍慰安婦問題も、批難される事実とは違う、という立場だ。
 戦後70年も経っているので、生存者は少ないし、また、声高に己の経験として語れる人は皆無に近いのではと思う。だから、「国益を損なうような抗議」に対しては、よく知らないけれども、ともかく反論するというのが、政治家の仕事となっているのだろう。
 私は、武田泰淳の作品を読んでいたが、作品を読む限り、大変ひどいことを、当時の日本軍がやっていたということがわかる。とても「でっちあげ」では書けないことが書かれている。なぜ、でっち上げではないとわかるか、という人もいるだろう。しかし、読めばわかるのだ。読まない人が「でっち上げ」という。
 以前から、そういうことを考えていたのだが、 辺見庸さんが、同じようなことを書いていた。「・・・武田泰淳の短編『汝の母を!』や、南京で日本軍が犯した罪業をを描いた堀田善衛の小説『時間』は知っている人は知っているが、誰も言及しないのが問題だ」と。

関連するページを引用させていただく。
 伊藤博子<武田泰淳が語った戦争>
http://www.geocities.jp/shimanohy/kisousya/takedataijun/sensoutaiken8.htm
<大多数の日本人は、日本人がやったことについて、知らないだろう。教えられる機会はなかった。かろうじて、戦中世代の私の母が「日本の恥だから、皆知っていても語らないのだ」と、密かに語ってくれたことと、また、大学で武田泰淳を専攻し、戦争文学と関連書籍を集中的に読んだことで、初めて漠然とそのイメージを持つことができたのだ。

あまりに凄惨で、ここに引用することも出来ないが、戦争を語るのであれば、その前に、泰淳が描いた兵隊たちの姿―前掲の「勝負」「悪らしきもの」「汝の母を」前後の作品を読んでおくべきだと思う。

日本には、原爆ドームや原爆資料館で、原爆の被害の痛ましさは教える。また、兵士たちの「労苦」を残そうと、西新宿に「平和祈念展示資料室」がある。そこでは、シベリヤ抑留がどれほどつらい、非人道的な体験であったか、人形を使い立体的に再現している。いわば、被害者の立場で、戦争を伝えている。

では、日本軍が設置した「慰安所」と言う名の強姦施設は、どのようなものだったのだろうか?どんな風に女性が集められたのか。どういう風に女性が扱われたのか、私は、同じように再現するべきではないかと思う。今さらのように、証拠はあるのですか、などと政治家が言うのは、まさに「無知」の罪ではないか。知ろうとすれば、多くの作品、多くの証言がすぐそばにあるのだから。

それにつけても、私は、かつて子どもの頃に見た、ドイツのナチス展を思い出す。ドイツは、ナチスがやったことを、自らも認め、世界に知らせた。人間の皮膚を加工して作ったランプシェード、髪の毛で作ったロープ、油で作った石鹸・・・・その時の衝撃は忘れられない。いかに人間がひどいことをするのか、思い知らされた。そして、ドイツは、絶対にそこに加担した人を許さなかった。80歳を越えて逃げ伸びた元兵士も、追いかけ、逮捕していく。否定するとはそういうことだと思う。 >
~~~~~~~~~~~~
 以上、辺見氏が言うように、確かに、知っている人は知っている。武田泰淳、堀田善衛の研究者も多い。それでも、彼らは、学んだことが社会にどう役立つか、ということより、自分の生活が優先するので、余計なことを言って騒ぎたてようとしないのか、あるいは、発言はするが、黙殺されるているのか・・・・。
  

 


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