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2014年9月19日-真実はフィクションでしか表せない

 <真実は逆説でしか表せない>と言われる。
 かつて、個人を取材して、その人となりを記事にしようとしたことがあった。その人が魅力的だから取材するわけだから、その方の話は、とても興味深く、半端な小説よりリアルで説得力のある内容だった。「これぞ、誰も書かなかった真実!」と思い、記事にして、草稿を持っていく。すると、必ず、一番リアルで感動的なところが「削除」ということになる。その人の成功のもととなった、「努力のあと」は、成功した後は、他人に見せたくないということだと、後になって気づいた。3人取材して、3人が3人ともそうだった。面白い部分を削った文章は、「恵まれた人間が、恵まれた才能によって成功しましたよ」という、誰とも分かち合えない特別な話、自慢話のようなものになってしまう。それは、取材記事でありながら、嘘、ということになる。
 だから、真実を描こうとすれば、逆に、フィクションで描くしかないだろう。「これは作り話ですよ」という前提で書くし、読者もそのつもりで読む。しかし、そこから「こういうことが、あるかもしれない」「こういうことが、あったかもしれない」と、想像力をはばたかせて見えてくる世界があるだろう。フィクションということで、誰からも「この部分は削除」しろとは言われない。書きたいようにかける。
 こう考えてくると、フィクションには、作家の見た真実を読み解いていく面白さもあるというものだろう。

 「藤野光樹短編集」は、アマゾンのキンドル端末を持っている人が、無料でダウンロードできる。収録されている8作品のうち、「クローン」という作品は、再生医療の未来についての考察と読むこともできる。楽しみながら考えるのが、この短編集の魅力でもある。
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