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2014年9月7日- 文字の上達法

 ずっと、字が下手だといわれてきた。実際下手だった。原因は、小学校3年次の担任が「文字は読めればよい」と言ったことにある、と信じてきた。「もっと丁寧に書きなさい」と注意されることがあっても、「誰よりも早く書ける」「書いた内容が大事」「字の練習をするくらいなら、本を読んだ方が良い」と思っていたから、字がうまくなるはずもなかった。それが、中学生ともなると、さすがに「まずい」と気づき始めた。しかし、字の練習する暇があれば、やはり、勉強をした方が良いように思われた。そんな風だったから、丁寧に書いてみても、形や文字の間隔が取れない。「心を込めて書けばきれいになる」と教えられたが、そんなことはなかった。心のこもった、いびつな字が書けただけである。教員になって、板書しなければならなかったのは辛かった。
 そこで、子どもにはそんな思いをさせたくないと、次男は3歳からお習字に通わせた。ついでに自分も付き添った。そこで、文字は、「技術」だと初めて教えられた。「丁寧に」ではなく、「「この部分は、まっすぐ」とか「この払いは、大きく」、「長さの単位で言えば、一ミリの半分にも満たないかもしれないが、ほんのちょっと内側に線を寄せる」「書き出しに、ちょっとひっかけを作ると、字が締まって見える」「ひらがなの、丸みの部分は三角を作る気持ちで」など、とても具体的だったのだ。わかりやすかった。目からうろこ、とはこのことだろう。それで、一文字一文字は、だいぶ改善されたと思う。
 にもかわらず、署名やお知らせなど、一連の文字はお恥ずかしいレベルだった。
 ところがである。念ずれば、そういう出会いはある。豊田霞月先生が「お遍路えんぴつの旅」を出版されたと知った。この方のお名前だけは知っていた。そこで、その本を1ページずつなぞっていった。もはや、文字の上達はあきらめていたので、四国八十八箇所、お遍路とは何かということを、ゆっくり読むために、文字をなぞるという感じだった。1冊を終えた達成感がよかった。流し読み、速読とは違う読み方ができたと思う。この読み方が気に入って「えんぴつで書く奥の細道」とか、林芙美子の作品をなぞるものとかをやってみた。一日の終わりに、文字と、そして文章と向き合う。もしかしたら、写経をやる人の気持ちもこれに近いかもしれないと思った。
 そして、ある日気づいた。文字の間隔が一定になっている。行間も定まっている。思うように文字が並ぶようになっていたのだ。 ああ、そういうことだったのか、と腑に落ちることがあった。技術は、数学の問題を解くように、一気には答えが出ない、ということだったのね・・・と。目や手が覚える、それは一瞬にしてひらめく脳の覚え方とは違う、ということ。
  そこで、今度は、ちゃんと文字の練習をするべく、数十年前に子供の習字教室で使っていた、野本翠苑先生の練習帳をなぞっている。最近は、「文字がきれいに書ける人はいいですね」などというほめ言葉をいただくなど、数年前の自分には考えられなかったこともたびたびで、不思議な気がしている。
 一瞬の出会いや、きっかけで、人生は変わる、ということですね。


                        


 
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